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長野県 阿寺渓谷で食べるトマト

こ……ここどこクル……?

写真 2015-08-02 14 53 36

“朝方に社長とほげ子の襲撃を受け、発車寸前の下り中央線に逃げ込みどうにか逃れたまでは良かった。
失敗があるとするならば逃げ込んだ車内で不覚にも熟睡してしまった事だろうか。

“更に失敗が重なり、降りた駅で適当な電車に乗り込んだのがまずかった。
電車なら適当に乗っても元の駅に帰れるものだと思っていたのだ。

“気が付けばたどり着いたのは無人駅。
時刻表を眺めると次の電車が来るのは2時間30分後。

……まいっか。せっかくだから少しブラブラしてみるクルル♪

“幸いあてどない身の上。時間ならばいくらでも余っている。

ふぁー……すごいバス停があるクルねー。

バス停

“風情のあるバス停に感嘆しながら歩いていると、道端で停車しているタクシーを見つけた。
……土地勘がまったく無い為、運転手に挨拶を試みてみる。

こんにちはクル!暑い中お疲れ様クル!

“愛想のある笑顔で応えてくれた日に焼けた年配の男性運転手と暫し会話をすると、どうやらこの先にある【阿寺峡谷】が観光地として見物だとの情報を貰えた。

峡谷クルか……一番上にキャンプ場があるって話クルけど……

“教えてもらった手前、行ってみないというのも御好意を不意にしている様で何か気が引ける。
地図は無いが携帯が通じる箇所ならばWEBからデータをダウンロードできるし何とかなるだろう。




うわぁ……夏クルー……

河口

“峡谷の河口付近では、浅瀬で水遊びに興じる家族連れの姿がたくさん見受けられた。
碧い川と緑の山のコントラストが眩しい。

八王子じゃ見られないものばっかりクルねー……

岩肌
清流
吊り橋

“教わった道を歩いていると、随分と色々な風景に出会う事が出来た。
切り立った山肌。使われなくなった鉄道跡。ギシギシと軋む吊橋。山間を流れる清流や滝。

“普段の生活では決して目に出来ない新鮮な景観に、自然と心が弾み足取りが軽くなる。

川

水の色ってこんなにきれいだったクル?ちょっと泳いでー……ってヴャアアアアアア!!!!

“先に運転手から雪解け水なので冷たいと教わっていたが、あまりに綺麗すぎる水に誘われ思わず飛び込んでみた。
……後悔先に立たず。真夏だというのにまるで氷水の様に冷たい。

だ……だからみんなラッシュガードとかウェットスーツとか着て泳いでるクルね……

“ともあれ、幾分か下がった体温を実感しながら再度歩を進める。
目指すは頂上にあるというキャンプ場だ。

渓流

~~♪




道1

……




キャ……キャンプ場はまだクル?てゆーかこっちで道あってるクル?

“上り始めて一時間半ほど経ったろうか。未だにキャンプ場は見えず、道を確かめようにもいつの間にか電波が全く無くなっていた。

そ……遭難?シャレにならんクル……

“そういえば、朝から水分も食糧もまったく補給していない。行けども目的地は見えない。
次第に不安を増す心としんどくなる身体を嘲笑う様に夏の日差しが照り付ける。

道2

……み……水……メシ……まだクルか……?

“道路脇の清流を眺めながらひたすらに上る。最悪の場合にはあの水ならばきっと飲んでも大事には至らないだろう。
そんな事を考えながら上り続ける。

……み……

見えたクルウゥゥ!!あそこだクルゥゥウ!!

“熱中症に本気で怯え始めた頃に、ようやく目的のキャンプ場にたどり着く事が出来た。水を。とにかく水を。
幸いキャンプ場の入り口には、販売されているジュースの種類が掲示されていた。

すみません!!ジュースを!!サイダーを下さいクル!!

“管理小屋から出てくるなり、下から歩いてきたんですか、と目を丸くするおばあさんにお金を支払う。
と、はいはいサイダーですね。と小屋の向かいの清流の中にあったかごからペットボトルを取り出して手渡してくれた。

うっは!!めっちゃ冷たい!!

“先に身をもって冷たさを知った水にさらされていたサイダーは、キンキンに冷えていた。
グビグビと呷る度に、甘い液体が食道を心地よく刺激しながら胃の腑へと落ちるのがわかる。

“炎天下で乾ききった体に入れる炭酸というのは、どうしてこんなにも美味いのだろうか。

ふぃ~、生き返ったクルぅ……

“ニコニコしながらこちらを見ていたおばあさんに話しかけ、何か食べるものは置いていますかと尋ねてみた。
ごめんなさいね、ウチでは用意してないのと返ってきた言葉が少し残念だったが、このサイダーの味だけでも十分に元が取れる道程だ。

(さて、少し休んでから下山してどっかでごはんを──)

“おばあさんと少し話をした後に休憩していると、不意に横からザルが差し出された。
美味しそうな形の不揃いなトマトがいくつか入っている。

トマト

クル?

“見ると、先のおばあさんが変わらぬニコニコ顔。
せっかく来たんだから、よかったらコレ食べてって。
そんな一言に、思わず目頭が熱くなってしまった。

頂きますクルゥゥウ──!!

“塩も何もつけずにかぶりつく。甘い。冷たい。味が濃い。
美味い。トマトとはこんなに美味しいものだったのか。

おいしいクル!!おいしいですクル──!!

“人にも、風景にも、味にも。こんなに素晴らしい出会いがあるのだから、やはり旅に出てよかった。
そんな事を考えながら頂いたトマトの味は、ことさらに格別だった。




今回行ったのは長野県の阿寺渓谷でした。
おばあちゃん、本当にありがとうございました!