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夏の暑さと「洋食おがわ」

“……暑い。ひたすらに暑い。行きがけの店で帽子を購入したのは正解だったようだ。

“ごみパソを後にしてからどれほどの日が経っただろうか。今日も今日とて行くあても無くそぞろ歩く日が続く。

“涼を求めて向かった八王子市役所前の河原では、少し西に傾いた太陽がそんな暑気に参りかけている身体を嘲笑うかのように変わらず激しい日差しを投げかけていた。

川沿い

こりゃマズいクル。
どっかでご飯食べながら渇入れんとならんクル。

“一人ごちてからどこに向かうかを考えていると、ふと一件の名店が頭をよぎった。
そういえば八王子駅の近辺から西八王子駅近辺に移転した店があったな、と。

……移転してから行ってなかったクルね。

“おおかたの場所は聞いていた。
堪らずよろけそうになる足に力を入れ、西八王子駅へと歩を進める。





ふぃー、ようやく着いたクル。喉カラッカラクル。

おがわ1

“近くまで来て、迷うことなく店を見つけられた。
黄色い看板の佇まいは移転前の三崎町に有った頃と変わらぬ風情を漂わせている。

“第一回八王子お店大賞受賞店【洋食おがわ】
北野~三崎町と渡り歩き、此度は西八王子に移転した押しも押されぬ八王子の名店だ。
北野の頃から通いつめているお客さんもきっと多いだろう。

“完全に私見になるが、八王子お店大賞を受賞している飲食店は本当に良いお店が多い。
八王子の人間ならば皆わりと同意してくれるのではないだろうか。
是非今後も選び抜かれた良いお店を紹介してもらえると嬉しい。

おがわ2

“ビルの廊下に入って左手がおがわへの入り口となっている。
恐る恐るドアを開けると、カラカラと音が響きカウンターの奥から懐かしい女将さんの顔が現れた。

(……お店の雰囲気も変わってないクル!)

“変わった場所で変わらぬ顔に会う、というのは何故だか妙に落ち着くものだ。
帽子を取って一礼し、促されるままカウンターに座る。
ドアをくぐる前にオーダーは決めていた。メニューを見るまでもない。

からあげお願いしますクル!

“はーいと返事をしながら女将さんが出してくれた水を一口。──うまい。掛け値なしにうまい。
さんざん外を歩いて乾ききった身体には、普通の水ですら甘露に感じられる。

~♪

“店内のTVに映されるとりとめもないニュースを見ながら待つ。
すぐ後に美味しいものが待っていると思うと、この時間すら幸福に感じられるからふs

こんにちわー、二人空いてます?

クルッ!?

……?

……

どうしたの?りさちゃん?

……なんでもないわ。ちょっと知り合いに似た声が聞こえただけよ。
別人みたい。

ふーん、そっか。あぁ、楽しみだなぁ、久しぶりの外食だよ~♪

さっきも言ったけど、今日は私がもつからね。
遠慮しないで好きなの頼みなさい?

りさちゃん……あれ?後光が見える……?

バカ言ってないで座りましょ?






(アっ、あの女なんでここにいるクル~~~ッ!?)

あばッ…………あばばばばばッ……クルッ……

“しまった。自分が追われている身上だというのを完全に失念していた。
ともあれ、動揺を悟られてはいけない。
可能な限りしっかりと料理を堪能し、気づかれる前に店を後にしなくては。

あんたねぇ、あんまり無茶してないでちゃんと食べないとダメよ?
万一あんたが倒れたら周りの連中にも迷惑かかるんだから。

えへへ……ちょっとはっちゃけ過ぎちゃった……
これからは食費削るような無駄使いは気をつけるね♪

“はいから揚げおまちどうさまー、と女将さんがから揚げのプレートとご飯を配膳してくれる。
いただきます、と小声で呟いて端を割った。

おがわ3

うっは!これ!これこれ!相変わらずめっちゃうまいクル!

“しっかりと付いた醤油ベースの下味。職人技と言える絶妙な揚がり加減。
歯でかむ度にサクッ、ジュワッと心地よいリズムが口の中を刺激し、溺れる程の肉汁が口の中にあふれかえる。

シェフのこさえてくれるから揚げは天下一クルぅ~!!

“思わず口を突いた賛辞もそのままに、食べすすむ、食べすすむ。
こんなに美味しいから揚げがてんこ盛りで味わえるというのは、本当に、心から幸せな事だ。

“付け合せのサラダとカレースパがまた良い味を出している。
から揚げ、ご飯、サラダ、カレースパ。
完璧だ。完璧と言っても過言ではない布陣だ。

ふぃー……最高クルー、ごちそうさまでしたクルー……

“気がつけば眼前には空の皿が並んでいた。お勘定の旨を伝えて席を立つ。

“850円。量を考えれば決して高くはない。
こんなに美味しいから揚げを味わえてこの値なら、安いと言い切っても良いだろう。

……ほら、ハンバーグ半分食べなさい?あたしダイエット中だから。

りさちゃあぁぁん……お姉さまって呼ばせてくださいぃぃ……!!

ばッ!?何言ってんのよアンタ!?

……ごちそうさまでしたクルー。

“微笑ましい会話を耳にしながら、静かに店を出る。
本来ならば共に食事を楽しみたいが今はまだのうのうと顔を合わせられる様な立場ではない。

またな……クル。

“小声で口にしてから、焼けたアスファルトへと足を踏み出した。
ひりつく暑さを伴う夏の日は、異様に長い。
次はどこへ行ってみようか────





本日のお店、八王子市台町「洋食おがわ」様クル。ご馳走様でした!